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(バカだ、僕は。浮かれすぎていたんだ)
結局は、人を見る目がなかったことに尽きるが、それより何より初めて任務をともにした相手に裏切られ、ミズキの心は、怒りよりも悲しみに押し潰されていた。
ここで敵の慰み者扱いされるなら、選ぶ道はひとつ。
軍人として、潔く死を選ぶ。
「――さっさと殺せ。抵抗はしないが、貴様らのもとに投降する気もない。だから今すぐ僕を殺せ!」
ミズキはミハイルを睨みつけ、牙を剥く。だがミハイルは静かに首を横に振った。
「残念ながら、あなたを殺すのはまだまだ先です」
「……なに?」
「あなたは東洋の小国・リーベットと我がクラリスの混血だ」
「違う、僕はクラリス人……」
ミハイルはミズキに釈明などさせず、代わりに髪を掴む手に力を込める。髪の毛どころか、頭の皮を剥がされそうだ。みっともなく痛いなんて言えず、代わりにミズキは唇を噛んだ。
「その証拠にあなたの瞳は異色光彩だ。ディスタンシアの血など一滴もその身体に流れてはいないどころか、クラリスの瞳と血を受け継ぎながら、クラリスに銃を向けている。あなたの狙撃でどれだけの同胞を失ったか。あなたはご存じないのでしょう?」
「……っ」
「私が黒衣の死神なら、あなたは異色光彩の暗殺者だ。私はあなたのおかげでたくさんの部下を失った。その代償は高くつくと覚悟なさい」
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