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♯3 スイッチワード
連れてこられた場所は、クラリス軍本部の地下基地だった。
ミハイルによると、ディスタンシア軍の斥候すら嗅ぎ付けていないトップシークレットの場所だという。
「つまり、僕はもうここから生きては出られない、そういうことか」
ミズキが訊ねると、ミハイルは「ええ」とさらりと言いのけた。
あまりにもさわやかな物言いに、「あ、そうなんですね」とこれまた気楽に返事を返しそうになる。
地下に基地を作ったのは、ディスタンシアの空襲を避けるためと、捕虜の尋問を行う場所として最適だということらしかった。とはいえ、今までに空襲を受けたことはないとミハイルは話していた。『あの国の国力では、無理でしょうね』とせせら笑って。
ミズキの両手はひと括りにされ手錠で拘束されていた。両足首にも枷が付けられ、左右は短い鎖で繋がれている。
手械足枷付きの丸腰では、軍人だらけの警備を突破するのは難しい。しかも武器をはじめ、自分の持ち物は全て没収されているから、必要なものは自分で調達しなければならない。かくれんぼは得意だが、自分には不利だ。それを考えると脱走は現実的ではなさそうに思えた。
この地下基地は、街の郊外にあった。
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