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得体の知れない危険と、爆薬を取り上げられたと感じ、ミズキは飛び起きたが、背中に激痛を感じ、息を詰めた。
そこで初めて自分が白い木綿のパジャマを着せられていることに気付いた。
「これ……」
ミズキが襟を軽く引っ張る。
「汚い囚人服では衛生上宜しくない。ケガはしてなかったようですが、背中に違和感でもありますか?」
「……別に。でもなぜケガがないとわかるんだ」
「捕らえたときにどこも痛がらなかったからです。そしていま飛び起きた瞬間に顔を顰めた。だから背中だと思っただけです。一時的なものなら問題ありませんが、背中の痛みは内臓疾患の恐れもあります。痛みが酷いなら、軍医を呼びますが」
「……別に。必要……ない。」
ゆっくりと呼吸を整えながら痛みを逃していると、ミハイルが呆れぎみにため息をこぼす。
「別に、という顔ではありませんね。強情張らずに正直におっしゃい。本当はかなり痛いのでしょう?」
「僕は軍人だ。これくらいなんでもない」
「強がりは何の得にもなりません。脂汗が出てますよ。ほら寝て」
ミハイルはミズキの肩を軽く押し、布団へとリターンさせる。
「背中の痛みはいつから?」
背中の痛みはここ最近になってからだが、しばらくすれば治まる。きっと極度のストレスと、不安定な姿勢での狙撃が原因なのだろう。
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