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「あの尋問室で何があったか、教えてあげましょうか?」
ミズキは目を丸くした。この男は人の心を読めるのか。
今まさに聞きたかったことを正確に言い当てられ、ミズキは狼狽える。
なんとか平静を装ったが、ミハイルは口元に手をやり、楽しげに笑う。
「おやおや、あなたはまるで嘘がバレた子供のような反応をしますね。視線がその辺を彷徨ってますよ」
「なっ……」
「隠密行動を旨とするあなたのような狙撃手は、自らの感情に振り回されていては、狙いを外す恐れがある。だからこそ自分を律することが大切なのです。その専門でない一般の兵士ですら、敵の前で感情や思惑の起伏を露わになどしない。あなたは新兵以下、いや幼子と同じだ」
「…………」
今さらに兵士の心構えを諭され、ミズキは心の中で腹を立てる。会話するほどに自尊心を傷つけられる気がして無言を貫いていたが、それもなんだか居心地が悪い。
ミハイルはミズキを睥睨し、「さあ、次はどのような態度に出ますか?」とばかりに、次を待っているようにも見える。
この眼光を相手に、真っ向から睨み返す勇気も立ち回る方法もミズキにあるわけもなく、かわりに布団を頭まですっぽり被った。
話せる気分ではないと、具合の悪さを装って会話拒否の意志を示す。
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