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「実にお可愛らしい。大人ならそんな風にふてくされたりしませんよ?」
「ふてくされてなど……」
「そういえば、あなたはやたらと『軍人』という言葉を使いますね。『兵士』ではなく。変なところでこだわるのも、子供がよくやることです」
頭上からミハイルの楽し気な笑い声が降ってくる。
捕虜どころか、子供扱いされて悔しくてたまらない。
どうして早く殺してくれないのか。
ミズキをクラリス軍に売ったグスタフのことはさっさと片づけたくせに、クラリス軍に実害を負わせたミズキを殺す気配がないどころか、こんな清潔な部屋と衣服、暖かなベッドが与えられていることがおかしい。
こんな扱い……惨めだ。敵兵扱いされないなど、プライドが許さない。
それとも、これも黒衣の悪魔のやり方だというのか。
言葉巧みに腕に抱いて殺す悪魔の罠。
それともすでに自分は悪魔のマントの中なのか……。
優しくしてくれると見せかけて、すべてを壊しにかかる。そんな残酷さを潜ませてでもいるのか。
「ほら出てらっしゃい」
小さな子をあやすようにぽんぽんと優しく布団を叩かれ、ミズキはそっと顔の半分だけを外に出した。
顔を出した瞬間に撃たれてしまうことを無意識に警戒したからだが、ミハイルは銃を構えていなかった。
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