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♯4 恐慌
頭の芯が熱い。記憶の奥に何か強い違和感を感じていた。
寝返りを打つとふんわりと柔らかい感触が全身を包んでいるのに気がついた。
その感触が気持ちよくて頬をすり寄せる。身体を纏っているのも生地が薄くてどこか生臭い囚人服ではなさそうだ。
さらりとした気持ちいい肌さわりの衣服、さらに両手と両足の拘束もなく、布団の中で自由に手足が動かせる。
「……ん?」
額にひんやりとしたものを感じた。
耳を澄ませばパチパチと火が弾けるような音がする。そういえば自分はクラリス軍の営倉に居たはずだと思い、ゆるゆると目を開けた。
「……?」
目に飛び込んできたのは黒い軍服、そしてミズキの傍らに座っていたのはミハイルだった。
眉間にしわを寄せている彼の表情から、何か気に入らないことがあるのだろう。体温の低いその手はミズキの額から頬を包むように移動し、ミズキが目覚めたのを確認すると、「起こしてしまいましたか?」と問われた。
思わずこくりと頷いてしまったが、そこで初めて自分はベッドに寝かされている。
「――!」
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