お祭りの夜に

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
別れ際、いつもの様に彼が言う 「今日はほんとにありがとう」 スキンシップの近い彼 彼の手の甲から薬指、小指にかけて それらが彼女の左手小指の外側に触れたり離れたりを繰り返す 繋いでいいのか分からなくて でも彼の温もりに触れたくて きっと拒まず受け入れてくれる そう思うけど、手を差し出す勇気が出ない 少しずつ縮まる二人の手の距離 そしてあったかい温もりに出会った ダンスでも踊るかのように浅く だけど力強く 繋がれた手の温もりが熱い... 何度もお礼を言ってマンションに帰って行く彼 彼の愛する妻と娘が眠る部屋 離れてしまった手がまだジンジンする... 一度も振り返る事なく、彼はポケットから鍵を取り出し、エントランスの中へと消えた
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!