お祭りの夜に

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お祭りの夜に

道を塞ぐようにジグザグ歩く彼の後ろ 隣に並びたくて一生懸命隙間を見つけていたら 彼が笑った 「俺に付いて来るしかないだろ」 あなたにだったら、どこまででも付いていけるよ... 笑いながら彼は続ける 「ムカつくだろー」 彼女は答える 「ムカつくっ!」 そう言ったけど、こんな何でもないじゃれ合いが心底幸せって、あなたは分かってないんでしょ ずっとふざけていた二人 彼がぶら下げる様に持っていた飲みかけの缶ビールに彼女がぶつかり、中のビールが飛び散る 「あーあー。俺のビールがぁー」 「まだいっぱいあるじゃないですか!」 突然の事に動揺した彼女は、彼の代わりに持っていたスーパーのビニール袋に入っているビールを掲げると、ペシペシ叩いて見せた ついつい可愛くない態度をとってしまう 「違うよ!お前にかかるだろ!」 そこで彼の口調が優しくなって 「ごめんな」 彼の言葉は麻薬だ ありがとう ごめんね いつもドキドキが激しくなって、頭がしびれる 好きって言いたい... でも言えない... だって彼は既婚者だから 彼女は気持ちを隠すように、怒ったようにこう言った 「もう...なんなんですか...」
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