始章

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始章

 これは、若芽が大木になるぐらいの。  気が遠くなるほどの大昔のおとぎ話――  あるところに、この世に二人といないほどの美貌を持ったお姫さまがおりました。  髪は黄金よりも美しく。  瞳は空よりも透き通り。  声は一度聴けば忘れられなくなるほどで。  世界中がお姫さまの魅力の虜になっておりました。  お姫さまは言いました。 「私はこの世で一番綺麗ではありません、綺麗でも何でもありません」  周りの景色すら霞むような美貌を持ちながらも。  しかしお姫さまはその美貌を使うようなことをせず。  自分は他の人と同じなのだと、そう言ったのです。  ですが、その言葉さえも周りの人々を魅了させるのです。  話せば話すだけ。  目を向ければ向けるだけ。  お姫さまの願いは届かず――逆効果でした。  それでもお姫さまは言いました。 「お願い……私は、綺麗じゃないの…………」
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