始章

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 そう、お姫さまが自身の美貌を自慢として使わなかったのは。 “友達”――が欲しかったからなのです。  生まれた時から一国の姫として生まれたから……ではありません。  その、あまりにも美し過ぎる“存在”故です。  男達はお姫さまを手に入れたいと思い。  女達はお姫さまの後ろをついていくばかり。  誰一人として、お姫さまと対等に向き合える者はいなかったのです。  だからお姫さまはいつも孤独でした――いつも独りでした。  実の親でさえも……お姫さまの美貌を他国の交渉材料として。  しかし今日――お姫さまの美貌に魅了されず。  唯一“まともに向き合ってくれる”殿方が現れたのです。  これにお姫さまは神様に感謝をしました。 「私なんかの為にあなた様が感謝することはありません。ですからどうか――」 「どうか――ええ、なんでしょう? なんでも仰ってください!」 「……なんでも、と申しましたか?」 「ええ、なんでもと言いました!」  お姫さまはその男のことを無条件で信頼しておりました。  だから……なのでしょうか。  その男が急に……不敵な笑みを浮かべて。 「では――その笑みを、永遠に無くしてしまいましょう」  男はお姫さまの元に向かって駆け寄り。  懐に隠し持っていた怪しげな薬を、お姫さまの口の中に無理矢理流し込みました。
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