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「あなた様が綺麗なのは、その透き通るような声を持っているから」
――――どうして……?
「あなた様が綺麗なのは、その輝かしい瞳を持っているから」
――――せっかく、私を……
「あなた様が綺麗なのは、その顔が――」
――――ああ……何故……何故なの……?
「あなた様が――――」
男の声は既にお姫さまの耳には届いておりませんでした。
お姫さまは意識を失い、その場に倒れてしまいました。
しかし――そのことを、男以外は知りません。
何故ならば、その男のことをあまりにも信頼していたお姫さまは。
自分に使えていた者達を“邪魔者”として扱ったからです。
つまり――その場にいたのは『お姫さま』と『男』のただ二人。
お姫さまに怪しげな薬を呑ませたことも。
容易くお姫さまの元に駆け寄れたのも。
そのせいで、お姫さまが――【災い】となってしまったのも。
全部……知らなかったのです。
そしてお姫さまはその国から姿を消しました。
男が担いで行ったのか。
それともお姫さまが自ら国を出たのか。
それを判断する術は在りませんでした。
ただ一つ――おとぎ話の始まりとして語り継がれることになった。
この事実を、除いて…………。
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