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「――という訳でこのお話は無かったことに……」
目の前にいる女性にそう言いながら、リオはわざとらしく悲しそうな表情をする。
このように“嘘”をついて断るのは、一体何度目だろうか。
――――……。
女性が部屋を出てから、リオは大きなため息を吐いた。
「ああ、何故このようなことをしなければいけないんだ……」
先ほどまでこの部屋にいた女性は、リオの“見合い相手”だ。
先日十八の誕生日を迎えてからと言うもの、今日までリオは見合いの連続だった。
それはリオが一国の王子であるが故のこと。
十八と言う立派な大人の仲間入りを果たしたからには、妻を娶らなければいけないのだと。
なるほど、疫病や病で突然死んでしまわない為に、サッサと結婚しろと言うことか。
それで王族の血は保たれる――理屈は分かる。
だが“結婚”と言うのは本来、互いが愛し愛された関係の男女が結ばれる儀式のはず。
なのに、自分は愛する人とは結婚出来ない。
それに、自分と結婚したいと思ってくる女性は全て――『権力』が欲しいだけの生き物ばかりだ。
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