大人は嘘つき

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「ん?」  読書をしていたティオルラが、その違和感に反応した。彼にしか解らない違和感。自身の影から魔力を感じる。 「……あ」  影から一人の顔が半分だけ現れた。まるで影を水のようにし、水中から浮かび上がったかのようである。その顔は知っている顔だった。 「何をしている? コルドア」  ティオルラがそう声をかけると、影の中にいた彼女――コルドアが一度、驚いた表情を見せ、影の中に潜ると再び、恐る恐る顔を出した。 「とりあえず匿ってください」 「何かの犯人か貴様は」 「先生はここで何を?」  そう言って、コルドアは周囲を見渡す。  殺風景な部屋、というのが第一印象だった。十畳ほどの部屋に机と椅子だけ。白い壁に天井。二人の会話がなければ無音が空間を支配してしまいそうだ。 「質問しているのは俺の方なんだが……俺は、これだ」  ティオルラは持っていた本を見せる。それを見て、コルドアは影の中で首を傾げた。その反応を見て、彼は溜め息を一つ。 「読書だ。二時間ほどな」 「なるほど」 「俺の質問にも答えろ」 「ロベリア。喧嘩。逃亡」 「俺は検索サイトじゃあない」  そう言って、ティオルラは持っていた本をぱたん、と閉じた。
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