月一の習慣

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昔からぬいぐるみが好きだ。特に何故かは分からないが好きなのはテディベア。どんな色でも、どんな形でも、テディベアなら好きなのだ。 増えたぬいぐるみの山を1つずつ手に取って洗濯ばさみに挟んでいく。あの日から教訓を得た私は月に1度、こうやって大量のぬいぐるみたちを部屋干し用の物干し竿に干している。1つ、2つ、3つ、4つ…気が遠くなりそうなくらい多いぬいぐるみ。大きいのも小さいのも色々あるから余計に、重さを考えてうまく干さないと斜めになってしまう。 色の多少変わっているぬいぐるみたちが最後の方。ぬいぐるみのお手入れを調べてやってみようかと思ったが、余計なことをして色が落ちてしまうのも、うまく乾かしきれずに傷んでしまうのも嫌でそのままになったぬいぐるみたち。 一体いつどうやって手に入れたんだっけ。 ああ、そういえば、ゲーセンでとったんだっけ。 1つ1つ手にとっては、思い出を確かめながら干していく。これとの思い出はこう、これはよく一緒に寝ていたやつ、こっちはベッドの上に飾っていたもの、あっちは…。大丈夫、まだ覚えている。 残ったテディベアを1つ1つ、カビが生えていないか確認する。 しっぽ、問題なし。 足、問題なし。 確認を終わったテディベアを洗濯ばさみで止めていく。ふ、と手を伸ばした先に、ふわふわの薄茶色のテディベアが見える。あの日捨ててしまったテディベア。 出窓に置いた、一番のお気に入り。ふ、と足先を見ると出窓に座り込んで足を抱えているにも関わらず、末端冷え性の私の指先は紫色。足を踏んで温めつつ、テディベアに手を伸ばす。しっぽがカビて緑色に変色している。私の左手にはいつの間にか鋏が握られていて、ばちんと音を立ててしっぽを切り落とす。ゆっくりと落ちていくしっぽ。右手にはしっぽの無い、テディベア。 手を伸ばした先に見えたはずのテディベアはなく、手は空を掴んだ。 あのときしっぽを切り落としてしまっていたなら、今ここにあっただろうか。 忘れっぽい私が唯一覚えているぬいぐるみの思い出。物はないのに、今もまだ胸の中にある、あの日、捨ててしまったテディベアの思い出。祖母から貰った、大事だったテディベア。
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