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「ちょっと、あんた何? なんで私の部屋勝手に入ってんの。お母さんのお客さんの子?」
私は破裂せんばかりに収縮しだした心臓に手を当てながら、驚きを逃がすようにゆっくり呼吸した。
「いや、違うよ。アタシは使命を受けてあなたに会いに来ただけ」
「は? シメイ? なんの遊び?」
妙に落ち着いたしゃべり方をする子どもだ。
私は部屋のドアノブから手を放すのも忘れて、謎の子どもが私のベッドの上で腕と足を組んで偉そうにしている姿を眺めた。
なんというか、ずいぶんとおかしな子どもだ。
何歳くらいなんだろう、はっきりは分からないけど、従弟の淳平よりは小さそうだ。
そうすると六、七歳ってところなんだろうか。
アタシと言うくらいなんだから女の子なんだろうけど、パッと見では性別までは分からなかった。髪は男の子にしては長めだし、女の子にしては短い。
「使命だよ。『使う』に『命』で使命」
「使命ね。ふーん。ま、良く分かんないけど、出てってくんない? 誰とウチに来たの? 親?」
あれ、でもさっきお母さんはエプロンをつけてリビングから出てきた。
誰か来てるような様子はなかったけれど。と考えながら、私はようやく部屋に入ると、鞄を机の上にどさりと置いた。
そして腰に手を当てて子どもを威嚇する。
子どもは、眠たげな目をして私をただ眺めていた。
大きな目が半分も開いてはいない。子どもにしちゃ表情が乏しくてなんか気持ち悪い。
子どもはフーと軽いため息をついた。
「悪いけど、出ていかない。というか出ていけないの。この使命が終わるまではここに居ることになる」
「私の部屋でどんな使命を果たすっての? 私着替えるしさ。ね? もうおうち帰んなよ」
すると「その血はどうしたの?」と、子どもがぷりっとした手で私の脇腹を指さした。
「あーこれ? 同級生が怪我してさ。私の血じゃないよ。って。そうじゃなくて。帰んなさいって言ってんの」
「だから、使命が終わらないと帰れないって言ってるでしょ」
なんなんだ、と私は子どもの淡々とした雰囲気にだんだん苛立ってきた。
するとその時、階段を上ってくる足音が聞こえてきた。子どももドアの方を見る。
「ちょっと花梨。血の付いたワイシャツ、早く脱いでちょうだい? 洗ってみるから」
開けっ放しにしていたドアからお母さんが顔を出して言った。ヒステリーが少しおさまった様子だった。
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