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「今の言葉、本当は朱音に向けて言いたかったんじゃないかな」
蒼汰からもらったお土産の袋をじっと見つめたまま立っている柚李に、玄樹が言った。
顔を上げて玄樹を見ると、穏やかな眼差しと目が合う。
「蒼汰と朱音。お互いのことが気になってしょうがないみたいだし、もう仲直りしたいって思ってんじゃないかな」
長い付き合いだからこそ分かるものがあるのであろう、玄樹の目を見ていると何も心配などないように思えた。
「これが終われば……きっと元のように戻れますよね」
希望を込めて言った柚李の言葉に頷いた玄樹は、困ったように笑った。
「めんどくさい彼氏を持って柚李も大変だな。」
部屋を出る前の蒼汰の優しい顔が頭に浮かんだ。
同時に、思いがけず間近で言葉を交わした憧れの千尋の顔も思い出されて、柚李は複雑な気分になった。
「彼氏……なんて……」
お土産の袋に目を戻し、袋の端を両手でぎゅっと握りしめた。
「柚李!玄樹!何やってんのー?みんな待ってるよー!」
廊下の奥から、二人を呼ぶ蒼汰の声が聞こえる。
柚李はお土産の袋を制服のポケットに入れて、玄樹と共にみんなが待つ場所へと急いだ。
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