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オーストラリア予選。
蒼汰と玄樹がずっと岩だと思っていた物が巨大な羊だと分かった瞬間に、二人は命の危機を感じた。
「マリンちゃんは強烈だったな」
あの死闘ともいえる戦いを思い出すと、玄樹は帰国して癒された身体に疲労感がぶり返すような気分になった。
「マリンちゃん……元気かなぁ」
玄樹とは逆に、思い出した事であの時のワクワク感が蘇ってきたのか、蒼汰は足をゆらゆらさせながら満面の笑みをこぼした。
「羊のマリンちゃん、蒼ちゃんの事すっごい気に入ってたね」
白蓮がからかうが、蒼汰は満更でもなさそうに笑顔のままだ。
「いやぁ、俺のかっこよさは世界共通ならぬ全生き物共通だって事が分かって良かったよ」
ご機嫌の蒼汰の横で仏頂面の玄樹が黙り込んでいるのが面白くて、白蓮もニヤニヤが止まらない。
「玄ちゃんの良さは、分かる人が分かればいいの。マリンちゃんの好みは蒼ちゃんだったって、それだけの話だよ」
慰めるような白蓮の口調に、玄樹は眉間のシワを深める。
「別に気にしてない。動物に好かれないのは慣れてる」
平静を装った玄樹に、全てをお見通しと言わんばかりの白蓮は笑いが止められなかった。
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