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「俺らもアメリカ何回も行ってるけどさー……」
「いや!だから!アメリカ予選の話はもういいんだって!」
わざとらしく話を続けようとする白蓮に、痺れを切らした蒼汰が声を荒らげる。
蒼汰が何を聞きたいのかを分かっているくせに、聞こえないふりをして別の話を続ける白蓮は、やっぱり意地悪だと玄樹は思った。
「えー?そうなの~?まだアメリカ予選のことについて話したかったのになぁ」
またニヤニヤと笑いながら、白蓮は蒼汰を見る。
「それは!後で聞く!それより、イタリア予選を……」
身体を前のめりにした蒼汰が白蓮を急かした時、部屋の外から足音が聞こえた。
蒼汰達と玄樹はそれに気づき、パッと扉の方を見る。
足音は徐々に近づき、部屋の前でピタリと止まった。
白蓮はその足音の正体が分かっているかのように、扉の方はあまり気にしていないようだ。
ドアノブがガチャリと音を立てて回されるのを、蒼汰はゴクリと唾を飲み込み見つめる。
ゆっくりと扉が開かれると、そこに朱音の姿が現れた。
「朱音……」
蒼汰は朱音を見たけれど、朱音は蒼汰を一瞬見た後ふいっと目を逸らした。
「あーちゃん!おかえりー!あれ?一人なの?柚ちゃんはー?一緒じゃないの?」
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