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「ちっ…………!!!」
床に転がったままの柚李が固まって動かないのを見た蒼汰は、手を差し伸べたまま隣にいる男を見た。
自分と同じように柚李に向かって手を差し出しているその男こそ、
「須賀谷……千尋……」
突然隣から自分の名前を呼ばれて、千尋はその格好のまま隣の蒼汰を見た。
「え……?…………あ!あなたは!先月の舞踏会で踊ってた方ですよね!?」
柚李の方に差し出した手はそのままに、千尋はキラキラした目で蒼汰に話しかけた。
蒼汰は一方的に千尋の素性を知っているが、千尋にとって蒼汰は知らない人である。
条件反射的に微笑みを浮かべた蒼汰だが、やや引きつっているのを自覚していた。
「あの舞踏会でのダンス、すっごくカッコ良かったです!!」
単純な蒼汰は熱く語ってくる千尋に悪い思いはせず、柚李に差し出したはずの手でなぜか千尋の手を握った。
「いやあ、ありがとう。そんな風に言ってもらって嬉しいな」
引きつった笑顔から一転、蒼汰が得意なキラッキラの王子様スマイルを向けられた千尋は、男同士にもかかわらず思わず蒼汰に見惚れていた。
固まったままの柚李は、その隙を狙って床に転がったままの体を千尋の前からズルズルとフェードアウトさせようと試みる。
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