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しかし、今や巨大化した柚李の体がそう素早く動けるはずもなく、あっさりと千尋に見つかってしまった。
「あっ!すみません!!大丈夫でしたか?」
蒼汰と手を握り合ったまま、柚李に顔を向けた千尋は心配そうな顔つきだ。
柚李は首が折れているかのように思いっきり背けた顔のまま、何とか一言だけを告げる。
「ダイジョブデス」
「ぶふっ」
不自然な片言での言葉に、朱音が思わず吹き出した。
「そうですか、良かった。…………あれ?」
蒼汰と握り合っていた手を優しく離した千尋が、柚李の顔をまじまじと見ようとする。
「君、もしかして…………はび……」
「ジョディー デス!」
千尋の言葉を遮って、柚李が叫ぶ。
「ジョディー デス!!」
眉間にしわを寄せて、睨みつけるように千尋を見る。
睨みつけられた千尋だけでなく、その部屋にいたみんなが目を丸くして柚李を見る。
「ジョディー…………さん…………?」
柚李の迫力にたじろいだ千尋が、恐る恐る柚李に声をかける。
「ハーイ!ジョディー デース!!ニホン ト イタリア ノ ハーフ デース!!」
この場をジョディで押し通したい柚李は、千尋の素直さにつけこみ陽気なイタリア人を演じることに決めた。
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