1.告る!羽曳野 柚李

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ゆっくりと……ゆっくりと深呼吸をする。 口から吸ってお腹が膨らむまで吸いきったら、今度はゆっくり時間をかけて鼻から息を出す。 正しい深呼吸の仕方をNHKの番組で見たから間違いない。 口から吸う。 鼻から出す。 息を吸うのに合わせて腕を大きく広げて、出すのに合わせて腕を体の前で交差する。 2回、3回……。 そこまでやって、ふと思う。 「あれ……?口から吸う?鼻から吸う?口から吸って鼻から出す、だったかな?」 さっきの深呼吸をなかったことにするために、デタラメに息を出し、パタパタと手で扇いで散らす。 「もう1回」 鼻から吸う。 空気をしっかり吸い込んで、少しだけ息を止める。 それからゆっくりと口から息を出す。 10回ほど繰り返して、むしろなんだか息苦しさを覚えてきた。 鼻、口、と考えるあまりに、ちゃんと呼吸ができていなかったようだ。 「よし、練習だ、練習」 ちゃんとできなかった深呼吸のせいで荒い息、昨日ほとんど眠れなかったせいで真っ赤な目。 気合いを入れてセットした髪の毛には、今時誰もしていないような大きなリボン。 それから真っ赤な口紅。 先を見越して買った真新しい制服はブカブカ。 そう、この少女こそ、この物語の主人公、羽曳野(はびきの) 柚李(ゆずり)である。
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