4.学ぶ!羽曳野 柚李 ー後編ー

23/64
前へ
/696ページ
次へ
「ここからはみんな敵だな」 不敵な笑みを浮かべた蒼汰が、一斉に立ち上がったみんなを見渡しながら言う。 先ほどまでの和やかなムードが、一転してピリついた空気に変わった。 「じゃあ、クイズ大会決勝、頑張りましょうね!」 まずは千尋ペアが最後まで爽やかに、手を振りながら部屋を出る。 「んじゃ、俺らも行くか」 朱音が柚李に向かって声をかけると歩き出した。 「あ!はい!」 朱音の後を追い部屋を出ようとする柚李を、蒼汰が呼び止める。 「待って!柚李。……これ」 蒼汰がポケットの中から取り出した袋を受け取った柚李は、不思議そうに袋を見た後に蒼汰に目を向けた。 「それ、お土産。って言っても、帰ってきてから空港で買ったものだけど」 優しい目で自分を見る蒼汰に、柚李は申し訳なく思う。 「蒼汰先輩……。ごめんなさい。私、そこまで考えてなくて……。ありがとうございます。」 たっぷりと付いた脂肪に邪魔されながらも、柚李は蒼汰に出来る限り深々とお辞儀をした。 「今は敵だけど、これが終わったらまたみんなで仲良くしような」 柚李の頭に手をポンっと置いた蒼汰は、優しい笑顔で柚李を見つめた後、先に部屋を出た。
/696ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加