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「ここからはみんな敵だな」
不敵な笑みを浮かべた蒼汰が、一斉に立ち上がったみんなを見渡しながら言う。
先ほどまでの和やかなムードが、一転してピリついた空気に変わった。
「じゃあ、クイズ大会決勝、頑張りましょうね!」
まずは千尋ペアが最後まで爽やかに、手を振りながら部屋を出る。
「んじゃ、俺らも行くか」
朱音が柚李に向かって声をかけると歩き出した。
「あ!はい!」
朱音の後を追い部屋を出ようとする柚李を、蒼汰が呼び止める。
「待って!柚李。……これ」
蒼汰がポケットの中から取り出した袋を受け取った柚李は、不思議そうに袋を見た後に蒼汰に目を向けた。
「それ、お土産。って言っても、帰ってきてから空港で買ったものだけど」
優しい目で自分を見る蒼汰に、柚李は申し訳なく思う。
「蒼汰先輩……。ごめんなさい。私、そこまで考えてなくて……。ありがとうございます。」
たっぷりと付いた脂肪に邪魔されながらも、柚李は蒼汰に出来る限り深々とお辞儀をした。
「今は敵だけど、これが終わったらまたみんなで仲良くしような」
柚李の頭に手をポンっと置いた蒼汰は、優しい笑顔で柚李を見つめた後、先に部屋を出た。
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