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連日の大雨がやっと上がり、ようやく梅雨明けを迎えた7月。
登校するなり、教室ではない場所を目指して歩く女子生徒が一人。
目指す場所にい四人が学校の教室などにいる事はないと、もうすでに分かっている。
「はぁ……」
駅からここまで、歩いて登校する生徒など彼女の他にはいない。
梅雨の名残か、まだ湿気が残る空気と朝からギラギラに照りつける太陽に照らされて、額からは汗が流れ落ちる。
それとは別に、気の重さからか、ため息が止まる事はない。
手に持っている羊のストラップを時折眺めて、また一つため息をつく。
「はぁ……」
クイズ大会からたった数日ですっかり痩せた、いや、やつれた柚李は、足取り重く部室を目指して足を進めた。
「あ、柚」
学園内ではほとんど声を掛けられることがない中で、珍しく自分の名前が呼ばれて思わず振り返る。
「朱音先輩……」
眉をひそめ、あからさまにイヤそうな顔をしてみたが、朱音は何も気にせずに柚李の隣に並んで歩き始めた。
「久しぶりだなー。…………お前、ちゃんと食べてる?」
ジロジロと遠慮無く全身を眺めた朱音が、すっかり痩せてしまった柚李に聞いた。
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