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相変わらず「う~う~」とうなりながら、柚李の目からは涙が止まらない。
「好きなんでしょ。千尋先輩のこと」
止まらない涙を拭うことを諦めて、鞠乃は柚李の背中を優しくなでる。
「好き。好きだけど、でも私なんかどうせ相手にしてもらえない。何の取り柄もないし、誰よりも目立たないし。あの集団の中にすら入れない」
柚李が憧れる大好きな先輩。
サッカー部のキャプテンで学校の生徒会長。
頭だって学校一いい。
誰にでも優しくて、誰にでも気さくに話しかけてくれる。
当然のようにモテるし、老若男女問わずみんなの人気者。
それが須賀谷 千尋という人だ。
また垂れてきた鼻水を気にすることもなく、柚李はひたすら千尋先輩を見続けている。
「誰よりも目立たないって……」
また始まった……、と、ため息をつきながら鞠乃は柚李の両手を握って、目を合わせる。
「もう何回も言うけど」
遠くの千尋先輩を見続けていたせいか、急に目の前に現れた鞠乃の顔になかなか焦点が合わない。
「柚李はどんなスーパーモデルよりも、どんな女優さんよりも美人だよ。はっきり言って誰よりも目立ってるし、もっと堂々としてたら、今頃スクリーンやテレビや雑誌の中の人になってるよ」
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