44人が本棚に入れています
本棚に追加
/696ページ
今朝の千尋先輩を思い出して、柚李の顔は赤くなる。
蒼汰は自分から話を振ったくせに、そんな柚李の様子が気に入らない。
「どれよ。いないの?千尋先輩は」
普段使うことの無い駅の珍しさと、からかい半分に柚李の想い人を探すので、4人はキョロキョロと中を見渡す。
たくさんのギャラリーが自分たちを見ているのは、全く気にも留めていないようだ。
明らかに目立っていると分かる柚李は恥ずかしさに下を向き、それでも目だけを上げて先輩を探す。
実は学校を出てから駅までの道のり、周囲を圧倒するほどの美貌を持つ柚李は遠巻きにジロジロと見られていたのだが、考え事をしながら歩いていたため全く気づかなかった。
そう都合良く会えるわけないか、と諦めかけたその時、かなり遠くの方に千尋の姿が見えた。
みんなに埋もれかけているが、柚李が先輩を見落とすことはない。
思わず顔をバッと上げて、つま先立ちになって先輩の行方を追う。
その柚李の行動に、蒼汰達も気づいたようだ。
「いた!?いたのか?柚李!」
架空の想い人だと思っていた千尋の姿を一目見ようと、蒼汰達は柚李の視線の先を見る。
「どれ?どれよ、須賀谷 千尋」
遠慮の無い朱音の声に、柚李が長年憧れてきた千尋先輩が、こちらを見た。
最初のコメントを投稿しよう!