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色白でフェミニンな雰囲気も併せ持つ蒼汰は、確かに『クマ』というよりは『ウサギ』のイメージかもしれない。
「見た目はウサちゃんでも、中身はクマだからね」
学園の門を抜けて走ってくる柚李をモニターで確認しながらニヤリと笑う蒼汰は、やはりウサギの皮を被ったクマなのかもしれない。
「おっ!柚ちゃん、来たみたいだね」
白蓮の声に、朱音と玄樹もモニターを見る。
そこに映る柚李は、まるで短距離選手であるかのように全速力で走ってくる。
「あいつ、まーたあんなボッサボッサの髪の毛で!」
人一倍おしゃれに気を遣う朱音が、思わず立ち上がって言った。
「今日は一段と荒れてるな」
玄樹の言うとおり、柚李は髪を振り乱しただけでなく、よく見れば制服のブレザーのボタンも掛け違えているように見えるし、靴下も長さが違う。
そして、その右手の先には黒色のキャリーケース。
キャリーケースは、ここに来るまでにもきっといろんな所にぶつけられたのだろう。
至る所がボコボコに変形しており、どこかに擦ったのだろう、一部塗装が剥がれているところも見受けられる。
必死になって走る柚李の姿を見て、蒼汰は大爆笑である。
そんな蒼汰を見て、他の3人は『やっぱり蒼汰はクマである』と改めて思った。
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