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 ワインしかない、とまで、思い詰めていた。    自分は酒は強い方で、ビール、日本酒、ジンにウィスキー、なんでも嗜む。  でも、女性の気を引くには、やはりワインしかないのだ。  だから、一年後輩の志村に、深々と頭を下げた。 「頼むよ、志村。力を貸してほしい!」  オフィスの隅、観葉植物の陰である。  午前中の光が斜めに差し込んで眩しい。 「いや、三浦さん、ワインに詳しい友だちを紹介するのは別にいいですよ。ただ、三浦さんが大丈夫かなあと思って」  志村はSEには珍しくおしゃれな部類だ。アニメのキーホルダーをカバンにつけたりしないし、ちゃんと美容室に通い、ゆるやかなパーマまでかけている。  少しぽちゃっとした白いほっぺたは、さらに好感度が高い。 「えー、大丈夫かな、ってどういう意味?」 「鱒川(ますかわ)は厳しいんで。特にワインに関しては」 「でも、ワインの力が必要なんだ。俺は遊びで婚活サービスを使ってるわけじゃない。もう35歳で真剣に伴侶を探してる。今、デート予約入ってる女性で3人目なんだ。前の二人は理由も教えてくれずにフェードアウト。絶対、デートで失敗したんだと思うんだよ」     
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