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「では、始めましょう。マスター、先ほどお願いしておいたシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンを一本ずつ。開けずに持ってきていただけますか?」  マスターは、30代くらいの男性だ。髭がうすくつるりとした顔にオールバック。若い頃のレオナルド・ディカプリオに似ている。俺がスツールによじ登る間に、グリーンのボトルと黒いボトルを運んできた。 「ワインは類型で学ぶべきです。まずは大きな分類から学び、さらに小さな属性を知っていきます。さて、目の前にある二本のワインの違いは?」   「色ですよね」 「何色と何色です?」 「赤と、白」 「どうして色が違うかご存知ですか?」 「さすがに知ってますよ。ブドウの色が違うんでしょ」 「結構。そのブドウの品種の一覧がこちらです」  結構?  数枚のプリントを受けとると、似たり寄ったりのブドウの写真の横に、カタカナの品種名が並ぶ一覧表。  小さなフォントサイズで、主な産地、香りや味わいの特徴が細かく書かれている。 「次回までに覚えてください」  返答に詰まっていると、キュっとコルクの音がした。いつの間にか、よく磨かれたワイングラスが置かれ、とくとくと赤ワインが注がれる。 「決意に乾杯しましょう」     
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