季節外れの冷やし中華

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病院でね清掃をしていると、ゴミ箱には結構いろんな物が入っているんですよ。 ええ、もちろん、覗こうと思っているわけじゃあないんです。 でもね、分別しなきゃいけないから、そんな作業の過程でいろいろ、ね。 お見舞いのお菓子の包装紙、お花、食べ物のゴミなんて定番の他にもね、 雑誌やペットボトル。 本当はいけないんでしょうけど、お酒のパックが捨てられていたこともありましたね。 グラビア雑誌とか、絵本とかもありますね。 手書きのお手紙が破られて捨てられていて、 そこにコーヒーかなんかの茶色い染みが付いてたりするのを見てしまうと、 何だか切ない気持ちになったりします。 松川さん、ありがとうございます。  では、最後に、今までで一番、驚いた又は気になったゴミはありましたか?」  調査員の女性は恵美子をちらりと見てから、そう尋ねた。 ああ、それでしたら、冷やし中華の袋麺が捨てられてたいたことですね。 「中華麺?なるほど。変わってますね。」 淡々と質問と記載を繰り返していた彼女が、はじめて興味を持ったように話しかけてきた。 「冷やし中華を食べたいなら、売店で出来合いを買ってくれば済む話ですよね。」 病室じゃあ調理出来ないですからね、と恵美子も付け加えた。 手元の調査書に中華麺と記載していた調査員が顔を上げて姿勢を正す。 はい、松川さん、 【清掃員への病院内で出されるゴミ実態調査】は以上で終了です。 「ご協力ありがとうございました。  あ、くれぐれも、お酒の話は他言しないで下さいね。」
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