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case1 雪女
「えーとっ。雪女の沫雪さん。少し寒くなってきたので、そろそろ落ち着いてください。」
「すっ、すみません!わ、わたすったらまた……!」
差し出したハンカチをズビーっと音を立てながら鼻をすする。
気がつけば私の周りは雪が積もり、吹雪が吹き、しっかりと防寒対策をしないといけないくらい極寒の雪山のようだった。
それもこれも、目の前に座っている妖怪、"雪女"が原因である。
「ハンカチありがとうです……。」
返されたハンカチはカチカチに凍っていて、冷たかった。
「それで……、宿を凍らせてしまったと。」
「ちっ、違うです!凍らしてなんか!ただ雪まみれにしてしまったです!それに、皆さん無事です!けど……、けど……」
どうやら、沫雪さんは故郷の雪山から初めて都会に出てきたらしく、街の外れにある宿で休もうとしたところ、暖炉の火に驚き動揺して吹雪を降らせてしまったとのことだ。
「わたすは見た目があまり人と変わらんですから……。わたすが妖怪だと知られ、追い出されてしまったです。」
妖怪と人が共存する今の世ができたのが約100年ほど前。
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