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ここまでお見通しの人間が居るというのは、けして心楽しいことではない。”人間”として、だ。
「今、ここは?」
「別に、おまえさんの後輩がここを引き継いで、探偵をやっている」
”八人目の刑事”制度は、今も健在ということか。
「では、今も何か捜査で?」
「そういうことだ。お前さんが居るときもだったが、居なくなってからも、難事件は尽きなくてね。まあ、新幹線を使って、全国区で動いているわけだが」
「そうでしたかでも、もうサチコさんは、居ないのでしょう?」
「ああ、半年ほど前まで、ここでおまえさんを待っていたのだが」
「半年前まで・・ですか」わたしは、驚いていった。
「ああ、あれから、ここで、おまえさんの後輩たちの面倒を見てくれてね」
「もしかして、彼女のために?」
「うむ、わかるか。それに、おまえさんをエイスにしたのも、わしが谷博士に、事件で殉死したお前さんの蘇生手術を依頼したことからだからな。そんなおまえさんを、何も知らずに彼女は、愛してしまった。それも、わしのせいだ」
「そこまで、ご自分を責める必要は無いと思います、田中課長」
「そうかな・・結局、その後、おまえさんは谷博士と共に日本を捨てて、世界に行ってしまった」
「世界にも、日本に負けず劣らず、いろいろな難事件が起こっていましたから」
「それは、表向きの理由だろう?結局、おまえさんたちは日本を捨てて、最終的にアメリカに戻ってしまった」
「幸いなことに、わたしの、エイスの技術をベトナム戦争とかに使おうという連中が続々と失脚しましたから」
「それも、お前さんの仕業なのでは」
「それは、ノーコメントということで」
「なんでも、この間は、特に最右翼のユニバーサル・アラムコもおかしくなったそうではないかい、たしか、トップのグリーンマン会長が行方不明になって」
「警視庁の方が、よくご存知で」
「同期の人間が、防衛軍にも居るのでね。ユニバーサルから兵器を調達していたのだが、これからも買えるのかどうか分からず、頭を抱えていた」
「そうですか」
「なぜ、日本を捨てたのだね」田中課長は、もう一度言った。「なぜ、戻ってこなかったのだ、東八郎?」
「それは、偶然です、いや、言いがかりといってもいい。言ったでしょう、世界は日本以上に難事件の山だったのです」
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