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「それは、世界のほかの場所でも、同じだったのではないかね」
「いけないんです。日本は、日本だけは、ほかの場所と一緒では」
「どうして?」
「どうして?ですって?こんなじゃない、こんなじゃないはずなのです。あの戦争で、負けて、多くの兵士の命と、東京の空襲を受けて多くの市民の犠牲を出して、ねえ、いいでしょう?そんな犠牲を出したら、もっとまともな国に、国民に生まれ変わろうと覚悟しても」
「ああ・・ああ、そうか、東、おまえさんも、ミッドウエーで飛行気乗りだった父上を亡くし、あの空襲で母上を亡くして戦争孤児になってしまったのだったな」
「それなのに、日本人は、日本人は、ただの金の亡者になってしまった。わかるでしょう?あのメガロポリスはなんですか。趣味が悪いを通り越して・・」
「東、君は、知らなかったのか?敗北した日本は、日本帝国は、膨大な国費を戦争に投入したために、破産してしまったのだ。それを挽回するために、われわれは守銭奴にならざるをえなかった。生きるためにね」
「生きるために?それを通り越して、どうしてメガロポリスを建設できるほど持ち直して、なお、守銭奴であり続けるのですか」
「それは・・もう、習い性というしか」
「それが、怖いのですよ、それが、わかりませんか。このままでは、また、日本は・・世界を相手に戦争をするようになるとは言いませんけど、怖い国になりますよ」
「それは、予言かい、東」
「わたしは、それが、おそろしい」
「恐ろしい・・エイスマンのいう言葉とも思えないが」
「どうしてです?そうですよ、わたしは、臆病な卑怯者ですよ、それがいけませんか?わたしは、もう、何度も死線を潜り抜けてきたのです。この疲れは、どうにもなりません、わたしにも、どうにもならんのです。なんとか、自分を鼓舞して、動いていますが・・このむなしさは」
「おまえさんは、クソまじめな上に、不器用な男なのだな」
「だめですか?」
「だれが、だめだといっただめだといったね?」田中は、東の肩に手を置く。「だが、まじめすぎて、その故に潰れていくのは、いただけない。おまえさんも、超人ながら、人間なのだから、息抜きを覚えるべきなんだ。さもないと、ダイヤモンドだって、このままでは潰れてしまうだけだ。そうは思わんかね」
「でも、どうしたら、いいんです、わたしは?」
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