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第一章 暗雲
秋晴れの澄んだ空気が、高校に向かう生徒たちの頬を撫でては過ぎて行く。通り過ぎる風のイタズラに持ち上がる前髪を気にしながら、この高校に通う【間宮 柚希(まみや ゆき)】はその群れの中にいた。今朝は寝坊して、癖の強い前髪がいう事を効かないままなのを柚希は気にしている。
「おはよ」
後ろから聞きなれた声がする。振り返ると幼馴染の【門脇 聡明(かどわき そうめい)】が微笑んでいる。
「おはよ」
返事を返しながら、柚希はまた前髪を触った。聡明は隣に並ぶとその様子を見て笑う。
「何よ」
「・・・そんなに気にしなくても大丈夫だよ」
「何が?」
少しイラついて柚希は答えた。でも聡明は涼しい顔で、済んだ青空を見上げている。柚希はため息をついて、前髪を触る手を下ろした。
「門脇先輩!おはようございます!」
憂鬱な柚希とは対照的な声が、通り過ぎ様に飛んできた。一年生の女子が、聡明に声をかけて走って行く。聡明が手を上げて答えると、その女子たちは弾けるような声をあげた。聡明はテニス部でキャプテンを務めるエース。運動神経がよく、爽やかな印象で女子には人気があった。
「相変わらず、モテるね」
柚希は、聡明に八つ当たりした。
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