第二章 薄明光線

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「ララは部屋から出さないで・・・」 「え!?」 「いい!?」  母親の真剣な目に柚希は頷いた。 「わかった・・・」 その日の夜、何度か言い争う声は聞こえたのだけれど、柚希は母親に言われたことが心配で部屋のドアを開けることができなかった。一晩、柚希は眠れぬ夜を明かした。 「全部終わったよ、母さん」  聡明は神社の境内にあるお神酒と塩、そして水と榊の全て入れ替えると、母親である宮司に声をかけた。 「おつかれさま。今日は1日だから、一緒に祝詞あげるかい?」 「あぁ、うん」  聡明は宮司の母親の後ろに並ぶと、その呼吸に合わせて祝詞を上げた。境内には龍神が祀られている。聡明が境内に入ると、いつも波のようにその気が漂う。それは見えない音のようでもあり、何かの波長のようでもあるのだが、とにかく心地が良いものだった。 まだ聡明の父親が生きていた頃、聡明は父親の後ろをついてまわって手伝うのが好きだった。何度となく聞いていた父親の祝詞を聡明はなんとなく覚えていまうほどだった。そして、その父親が亡くなった時も、聡明はここに来た。 父親をこんなに早く連れて行ってしまった神様を幼い聡明は、少し恨んだりもした。それでも龍神はいつものように優しく聡明を包んだのだった。     
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