第二章 薄明光線

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そしてこの神社を存続させるために、宮司になったのは母親だった。だから聡明は、母親の苦労を傍でずっと目にして来ている。しかし、それと同時にどれほどこの神社が地元の地域の人々から愛され、必要とされているのかを感じることができたのだ。それ以来、聡明はこの神社を継ごうと決めている。 「恐み恐みも白す(かしこみかしこみもうす)・・・」  二人で祭壇に頭を下げると聡明は母親に声をかけた。 「母さん。今日は大会前の朝練あるから、もう行くね」 「はい。行ってらっしゃい」  微笑む母親に聡明は頷いてから、併設する自宅に戻った。カバンを持って家を出ると、神社の鳥居の向こうに見慣れた制服を来た人が立っているのが見えた。不思議に思って、聡明は鳥居の方へと向かった。 「誰だろ・・・?」  そこには柚希が一人でポツンと立っていた。聡明は慌てて駆け寄ると、すぐに柚希の様子がいつもと違うことに気が付いた。 「おはよ、柚希。どしたの?」 「相談したいことがあるの・・・」  聡明は頷いて、歩き出す。柚希も隣を歩き出したのだが、すぐに涙をポロポロとこぼし始めた。 「どうしたの?」  立ち止まった聡明に、柚希は一言だけ言った。 「パパが・・・」  聡明はその様子を見て、すぐにスマホを取り出すと、テニス部の副部長にラインを送った。急用で出れなくなったと伝えて、副部長に一任した。 「ちょっとこっちで話そう」  そう言って、柚希を近くの公園に連れて行くと、ベンチに腰掛けさせた。聡明は隣に座ると、すぐに話を切り出した。     
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