第二章 薄明光線

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「おじさんに何かあったの?」  柚希の父親とは、小さい時には一緒に遊んでもらったこともあるぐらい聡明にとっても身近な存在だった。 「パパ・・・おかしくなった」  ポツリと柚希が呟いた。 「おかしいって?」  状況の掴めない聡明は、少し苛立った。あまりに柚希が憔悴しているせいだ。 「パパ、怒鳴ったり、物を壊したりするような人じゃなかった」 「うん、知ってる」  柚希はその言葉にパッと顔を上げた。 「だよね?!パパ、そんな人じゃなかったよね?」  聡明が少し驚きながら頷くと、柚希の目からまた涙が零れた。 「最近、パパの実家のことでママとモメてたの」  柚希は最近の両親の様子を、聡明に話した。聡明は柚希を見つめながら、時折頷いて聞いている。聡明から見ても柚希の両親はいつも仲が良くて、そんな喧嘩になっているのは想像がつかなかった。 「お金のことだけじゃない気がするの」 「う~ん・・・おじさん、仕事で何かあったんじゃ・・・」  柚希が聡明の言葉を遮った。 「違う!それは違う!」 「でもおじさんの仕事のことは、柚希にはわからないことだよ?」  聡明は柚希をなだめるように言ったが、柚希は首を横に振る。 「でも、それとは違うってわかるの!」     
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