2人が本棚に入れています
本棚に追加
柚希の必死さに聡明はため息をついた。
「・・・どうして?」
柚希は明確な理由があるわけでもなかったが、心にモヤモヤと溜まるものを吐き出した。
「あの夜の喧嘩の後から、何かわかんないけど・・・・」
その様子に聡明も首を傾げながらであるが、何かあるのかもと思い始めていた。
「・・・大丈夫だよ。言ってみて」
「笑わないでよ」
柚希はそう前置きすると、言いにくそうに口を開いた。
「あたし、小さい時からパパの匂いが大好きだったの」
聡明が小さくフッと笑った。
「笑わないでって言ったのに!」
柚希は口と尖らせて、聡明を睨む。
「いや、俺も父親の匂いが好きだったなって」
聡明は少し照れながら、そう言った。
「聡明も?」
「うん。なんか安心したんだよね。・・・もう覚えてないけど」
「そっか・・・」
遠い目をする聡明に、柚希は幼い頃に会った聡明の父親を思い出す。あまりよく覚えてはいないが、思えば印象は聡明と似ていたかもしれない。
「俺の話はいいから・・・」
聡明は恥ずかしそうに笑った。柚希もホッとして話を続ける。
「うん、それがね・・・パパの匂いが急に変わったの」
「どんな風に?」
聡明は柚希の顔を覗き込んだ。
「獣臭いの・・・」
最初のコメントを投稿しよう!