第三章 雷鳴

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 お骨になって更に小さくなったララを、大事そうに抱きしめると柚希は歩き出した。先日の電話で火葬を車で来て行ってくれる業者があることを、晄明の父親である住職が電話した柚希の母に教えてくれたのだ。柚希の母親がしっかりと供養をしたいと話すと、住職は寺での火葬を行って、その場で晄明の父親がお経をあげてくれることとなった。そしてララは、亡くなった次の日には滞りなく空へと帰っていった。 柚希の母親はお骨の相談をしており、まだお寺の中にいた。まだ離れたくない柚希は、ララを自分の部屋のどこに置いておこうかと考えながら歩いていた。 「柚希・・・」  寺の門をくぐったところで、柚希は帰って来た晄明と鉢合わせた。 「親父から聞いた。ララちゃん・・・」 「うん・・・」  二人は柚希が抱えている小さなお骨入れに目を落とした。 「済んだんだ・・・」  小さくなったララを見て、晄明は目を細めた。柚希は声を出さずに頷いた。 「幸せだったと思うよ」  そう言って、晄明はふわりと微笑んだ。ララを保護した時に、柚希が一番に連絡をしたのは晄明だった。晄明の寺には昔から、何頭かの猫が住みついていた。弱った猫がいる場合もあり、その面倒を見ていたのは晄明だったからだ。 「コウにもお世話になりましたって、ね・・・ララ・・・」  ララを抱きしめたまま、柚希は小さく頭を下げた。涙がまた足元に落ちる。 「可愛いコだったね・・・おじさんとおばさんは?」 「今、ママはお骨の相談してる」 「そっか。あれ?おじさんは?」     
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