第三章 雷鳴

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 晄明は鋭かった。何かの行事や出かける時には、柚希の家族はいつも一緒だった。だから、ララの最後の時に立ち会わないことを不審に思ったのだろう。 「うん・・・仕事に行った」  昨晩、ララが旅立ったことに柚希の父親は泣いて悲しそうではあったのだが、どこかあっさりと仕事に向かった父親に柚希は違和感が残った。 「・・・そっか。ララちゃん、病気だったの?」  晄明がなぜか納得したように言うので、柚希は不思議に思った。 「違うよ・・・突然。でもどうして?」 「だって最近、柚希元気なかったよね・・・?そのせいかって・・・」  晄明はしどろもどろになりなる。柚希は首を傾げた。 「いや、何かあったのかなって思ってたから」  晄明は苦笑いして取り繕った。柚希は少し驚いたが、その不愛想な晄明が柚希を気にかけていてくれていたことが何より嬉しい。 「ありがと・・・」  柚希は素直にお礼を言った。そして晄明にも、あの事を相談してみようとふと思った。 「それが実はパパが・・・」 「何かした?」  二人は小声で会話し始めた。 「最近、おかしくて・・・」 「おかしい?」  晄明の問いに柚希はコクリと頷いた。 「だからソウに相談してて、今日会う予定だったの」  その名前に晄明は、明らかに体を離して拒否反応をする。 「それなら、俺はいいか」     
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