第三章 雷鳴

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 柚希は、聡明にすぐヤキモチを焼く晄明に呆れた。幼い時からこういうところは、さっぱり変わっていない。そんな晄明を無視して柚希は続けた。 「なんかね・・・パパ、急に怖くなったの」 「怖い?」  晄明の拗ねた顔が真顔に変わった。柚希はまた小声で話し出す。 「怒鳴ったり、物を壊したりして」 「あのおじさんが・・・!?」 「うん・・・それでソウに相談したら、境内においでって」  その言葉に、晄明は面白くなさそうに鼻を膨らませて 「ふ~ん」  とだけ言って、腕を胸の前で組んだ。柚希は、晄明のそんな様子も無視して続ける。 「その原因がわかるかもしれないって、ソウが」 「原因?」 「なんかね、パパが『獣臭くなった』って言ったら、そう言われたの」  晄明もその言葉にゾクリとして腕を解いた。そして父親が昔、話していたことを思い出す。 「あら、コウちゃん!」  後ろから柚希の母親が、二人を見つけて声をかけた。晄明はパッと離れて軽く頭を下げる。 「ども・・・」  柚希の母親は目尻を下げながら、二人の元に歩み寄った。 「お世話になりました」  晄明に対する柚希の母親の言葉に、晄明は2ブロックに刈り上げた髪を触って下を向いた。 「いえ・・・俺は別に・・・」 「柚希、しばらくは落ち込んでるだろうから、気にしてあげて」  そう言って母親はニヤリと笑うのを、柚希は怒って制す。     
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