2人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
第四章 彩雲
境内の中で繰り返し波のようなものが、柚希を包んでいた。日にちを改めて聡明から神社に来るように言われたのだ。
「・・・ここって、気持ちいいね」
聡明は少し驚いたような顔をしたが、フワッと目尻を下げた。
「柚希もわかるんだね」
「うん・・・なんか洗われてるみたい」
「あぁ、そうかも」
二人で目を瞑ってその揺らぎを感じていると、聡明の母親が境内に入ってきた。
「お待たせ」
「すみません、忙しいのに・・・」
柚希は立ち上がって、聡明の母親に一礼した。
「何言ってんの!さて、始めようか」
家族のご祈祷を終えたばかりの聡明の母親が、山葵色の袴をサッサッと音を立てながら祭壇の前に歩み寄る。
「母さん、俺も試してみたい」
「いいんじゃない?」
柚希はまた椅子に腰を下ろすと、二人のやり取りを見つめた。
「ところで、何をするんですか?」
この状況になっても、柚希は何をするのか聡明から何も言われていなかった。
「柚希のパパを違う目で見てみるんだよ」
「違う目?」
聡明の母親の宮司は、二礼二拍手一礼すると、何やら唱えてから柚希と聡明の前に座る。
「そうよ。うちは代々、神様に遣えてきたから、ちょっと違う物も見えるのよ」
「はぁ・・・」
最初のコメントを投稿しよう!