1.墓泥棒の娘

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「……」  お互いに、ここが正念場だとわかっている。 「わかった。若いのにしっかりしているな」  先に老店主が折れた。  老店主は、最後まで自分の短剣に手を掛けなかった。  これは、ウソを認めたということだ。  ハギは短剣から手を離した。 「少年、名前はなんという?」 「ハギ」  名前を聞いたということは、一人前と認めたということになる。 「ハギ、5000ギンでどうだ」 「5000ギン……」  5000ギンは大きな家が一軒買えるほどの金額。  偽物ではなかった。  純金と希少な赤い宝石で作られた本物ということになるが、それにしても高い。  ハギは、あまりの大金で逆に怖くなった。  平気な振りをしたが、内心では心臓が口から飛び出そうなほど高鳴った。 「まだ、不満か? 悪いが、これ以上は無理だ。これが今の相場だ」 「一旦、考えさせてくれ」  結局、売らずに店を出た。  ハギが出ていくと、老店主は奥の男に目配せした。
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