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外に出ると、大通りに出て歩いた。
『5000ギン』が頭の中で繰り返し浮かんでくる。
初めて手にするかもしれないとんでもない大金。受け止めきれず、めまいがする。
おそらく、他のどの埋葬品よりも高額だったろう。
(どうしよう……)
一生に一度のチャンスかもしれないが、どう扱えばいいのかハギにはわからない。
大人の誰かに相談しても、取り上げられる未来しか予想できないところが悲しくなる。
ふらつきながら歩いていると、車が横付けし、中から男が二人出てきた。
離れようと動いたが、邪魔するように向こうもあわせてくる。
顔を見ると、知らない男。隆々と盛り上がる全身筋骨が服の上からも見て取れる。
一人はハギを見ている。もう一人は周囲を見て警戒している。
経験上、これはまずい状況だとすぐにわかった。
連れ去り。それしかない。
(助けを求めた方がいいだろうか?)
大勢の男たちが通りを歩き、道端で賭け事に興じ、酒を飲み、タバコをふかしてぼんやりしている。
揉め事が起きても野次馬根性で傍観するだろうが、助けようとする物好きなどいなさそうだ。
男二人に挿まれて身動きが取れなくなったハギは、手を掴まれて車に連れ込まれそうになった。
揉み合いすら絶対無理な圧倒的力の差。
(こいつら、強盗だ。私が黄金の鍵を持っていることを知っているんだ……)
先ほどの店のやり取りを覗き見ていたのだろう。
このままでは、殺されるかもしれない。
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