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特官は、あらゆる組織に潜入すると聞かされたことがある。
少年のような特官がいても変ではないのかもしれない。
ハギは懐の黄金の鍵を確認しようと、服の上からさりげなく握りしめた。
その固さにホッとしたが、まだ安心できない。
目の前の特官に悟られる前に、ここから離れなければならない。
必要以上に丁寧なお辞儀をした。
「あの……、助けてくれてありがとうございました!」
「一体、何があったんだ?」
「最初は道案内を頼まれたんですが、強盗だったんです。財布を出せ。出さないと殺すと脅されました」
揉め事の真の理由について知られたくなくて、さっきのでまかせに合わせた。
「あの……、自分も危険になるのに、どうして助けてくれたんですか?」
「か弱い女の子が襲われているというのに、男として見逃せないだろ」
「え?」
パッと、特官の顔を見た。
(なんでバレた?)という顔だったので、特官はクスっと笑った。
その笑顔は、怖い特官のイメージからかけ離れた可愛いものだった。
しかし、いろいろと都合の悪いハギは嘘を吐き通さなければならない。
「よく女の子に間違えられますが、俺は男です」
「ハハハ……。それは失礼した」
肩が笑っている。
(絶対信じていないだろ!)
甘く見られているのだ。
あの状況で女だと見抜いたということに驚いた。
観察眼が良いのか。
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