53人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
ハギは、逃げるように家に向かった。
膝が震えて力が出ない。よろけながらも必死に歩いた。
途中で、空っぽの鞘を川に投げ捨てたが、近くの人がすぐに飛び込み拾いに行く姿が見えた。
顔を見られたくないハギは、その後を見届ける前にさっさとその場を立ち去った。
頭の中は、さっきのことで一杯だ。
黄金の鍵の紋章は宝石でアレンジされていたが、特官の紋章と同じだった。
王直属なのだから特官の紋章と王族の紋章は同じはず。
つまり、これは王家に関係する鍵なのだ。
王家のものなら特官が探していてもおかしくない。
さっきの老店主も、この紋章に気づかぬはずがない。
それを知っていたからこそ、鍵一つに破格の金額をつけたのではないか。
しかも、そのことを黙っていた。
ハギが知ったら、さらに吹っ掛けられると警戒したのだろう。
あの男たちは、出てくるタイミングが良すぎた。
ハギが売らなかったので、老店主が強硬手段に出たのかもしれない。
自分のような子どもを殺しても奪いたかった黄金の鍵。
(恐ろしい……)
これはきっと、ハギが持っていてはいけない恐ろしい鍵なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!