1.墓泥棒の娘

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◇  帰るなり、エンモが待ち構えたように顔を出した。 「いくらで売れた?」  ハギが引くほど目をギラつかせている。  口止め料を払えとでも言うのだろう。  5000ギンなどと答えようなら、エンモが大騒ぎしそうだったのでウソを吐いた。 「買い取ってもらえなかった」  エンモはこれ以上ないというほど大口を開けて驚愕した。 「ウソでしょ! あんなに綺麗だったのに!」  ハギは、わざと怒ったように答えた。 「あれ、メッキの偽物だった! 宝石も偽物! すっかり騙されたわ! きっと、埋葬された時点で誰かがすり替えたんだと思う。売れなかったから、途中で川に捨ててきたんだ」 「捨てたって……」 「もう、寝るから」  エンモから逃れると自分の部屋に入った。
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