53人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
帰るなり、エンモが待ち構えたように顔を出した。
「いくらで売れた?」
ハギが引くほど目をギラつかせている。
口止め料を払えとでも言うのだろう。
5000ギンなどと答えようなら、エンモが大騒ぎしそうだったのでウソを吐いた。
「買い取ってもらえなかった」
エンモはこれ以上ないというほど大口を開けて驚愕した。
「ウソでしょ! あんなに綺麗だったのに!」
ハギは、わざと怒ったように答えた。
「あれ、メッキの偽物だった! 宝石も偽物! すっかり騙されたわ! きっと、埋葬された時点で誰かがすり替えたんだと思う。売れなかったから、途中で川に捨ててきたんだ」
「捨てたって……」
「もう、寝るから」
エンモから逃れると自分の部屋に入った。
最初のコメントを投稿しよう!