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もう少しすれば、ナローマが大きくなって手伝えるだろう。
2年後にハギが嫁げば、ナローマがハギの役目を言い渡されることになる。
この家の息子として生まれたからには、墓泥棒になるのだ。
それが、この家に生まれた運命だ。
でも、自分はこのまま素直にオリの嫁になりたくない。
盗人萩のように、砂漠の風に吹かれて生きたい。
ハギは、いつのまにか泣いていた。
流れる涙を袖で拭き取った。
翌日、自分の短剣がないことについに気づいたフーシが、やんちゃでイタズラ盛りのナローマを疑った。
「どこで失くした!」
「知らないよう! 僕じゃない!」
大泣きで否定するナローマが気の毒だったが、自分が犯人だと言い出すことはできない。
息子にはフーシでもそんなに責め立てないはず。
(ごめん……)
ハギは、心の中でナローマに手を合わせ、表の顔は知らぬふりを通した。
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