53人が本棚に入れています
本棚に追加
――バン!
遠くから狙撃されたが、弾はかすめただけで後ろの壁に当たった。
二人が振り向くと、ハギが小銃を構えて立っている。
「ハギ!」
ハギは、バイガルドに聞いた。
「バイガルド、あなたが私の父のフーシと墓守のダミシュを殺したの?」
バイガルドは、パンチの痛みを堪えて聞き返した。
「フーシとダミシュ? さて、誰だっけ?」
「とぼけないで。あなたは黄金の鍵を捜していたんでしょ。ホルベテの墓に隠した黄金の鍵が行方不明になり、ダミシュを問い詰めた。だけど、ダミシュは何も知らなくて、白を切っていると思って拷問して殺した。私の父のフーシが知っていると思ったら、今度はこっちを聞き出すために拷問して殺した。そうなんでしょ?」
バイガルドを問い詰めるチャンスは二度とこないと考えたハギは、一気にまくし立てた。
「黄金の鍵か。確かに俺はその行方を捜していた。その時に、在処を聞き出すために何人か拷問したのも覚えがある。だが、そいつらの名前は覚えちゃいない。必要な情報も出さない奴に用はないからな」
まるで虫けらでも殺したかのような冷酷さ。
ハギは悔しくて涙を零した。
「あなたにとっては取るに足らない人間だったかもしれないけど、一人の人間の後ろには、たくさんの家族がいるの。残された家族がいるの」
「ふん、墓泥棒の娘が! そんなに立派なご家族か!」
ハギは、ショックで何も言い返せなかった。
フーシをバカにされた怒り。出自を貶められた悲しみ。デスモディウムの前で墓泥棒の娘と暴露された恥ずかしさ。
自分でもわからない感情が、ごっちゃになって、震えが止まらなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!