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ハギが庭で洗濯物を干していると、デスモディウムが前と同じ場所に立っていたので驚いた。
「デスモディウム! どうしたの?」
あの日のことを思い出し、なんとなく、懐かしい気がした。
「黙って姿を消したから、心配で捜しに来た。元気そうで安心したよ」
「ごめん。私は大丈夫だから」
「オリとの婚約は白紙になったんだって?」
「うん。寝たきりになったみたい」
「そうか……」
「デスモディウム……」
何か言いたそうなので、ハギは黙って待った。
「君に結婚を申し込んでも大丈夫かな?」
「結婚!?」
ハギはビックリした。
「え? 本気? バイガルドが言っていたでしょ? 私は墓泥棒の娘よ。デスモディウムとは釣り合わないから、結婚なんて無理」
拒否するハギに、デスモディウムは優しく微笑んだ。
「そんなことはない。ハギ、君は勇気のある素敵な人だ」
「デスモディウム……」
デスモディウムは、ハギの手を取った。
「ハギ、私と結婚してください」
思いがけないプロポーズに、ハギは泣き出した。
「こんな私で良かったら……」
デスモディウムは、輝く黄金の指輪を取り出して、ハギの左手の薬指にはめた。
「とてもよく似合う。この細い手で戦った、君は美しい」
「デスモディウム!」
ハギはデスモディウムの胸に飛び込んだ。
黄金の鍵から始まった、ハギの冒険譚はここに終決。
ヌスビトハギは、凛々しく雄々しく美しく、今日も荒野に咲き乱れる。
終わり。
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