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ハギは想像した。
(フーシが、騙したなと、彼を怒る?)
なんの特権もないフーシが、特官相手に何ができるというのだろう。
(商談がなくなる?)
もとより、商談のつもりでここに来てはいないだろう。
目的は、黄金の鍵を探すことだ。
もし、正体をフーシに知られたら、正直に言うのかもしれない。
『ハギのいうように、私は特官で、ここには調べに来た。おたくのハギが黄金の鍵を持っているようなので、調べさせろ』
何も知らないフーシは、こう答える。
『黄金の鍵だって? はて? 何の事かな?』
いや、特官の言葉を疑った時点でしょっ引かれるから、思っても言わないだろう。
おそらく、特官に味方してハギを問い詰めるはずだ。
『お前、俺の目をごまかしてそんなものを隠していたのか!』
まず、間違いなく怒られる。
それだけならまだいいが、黄金の鍵を取り上げられて特官にしょっ引かれる。
そして、拷問……。
(そんなの、イヤ!)
どう考えても、ピンチになるのは特官ではなくて自分じゃないか。
ここで正体をばらしたところで、いいことなんてない。
ハギは、一切何も言わないことに決めた。
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